2004夏 オープンデスクレポート

 

 

妙延寺プロジェクト

 

2004.7.25 ? 2004. 8.2

河津 宏美

はじめに

 オープンデスクをさせていただいて驚いたことは、自分の作業をこなすスピードの遅さだ。藤間さんと武田さんに作業の内容を言われたときは、「

20分もあればできるかなー」と思うのだが、実際するとあっという間に時間だけが経っていて、2時間かかっている、とか、1日これしかしていない、というかんじであった。自分は、学校の設計の課題制作も時間に追われてした憶えしかないが、実際に事務所の作業時間のなかで自分だけがのんびりなにをしているんだ、と焦るばかりで作業が進まず苛々するといった毎日であった。しかし、昼休みや夕方の休憩になると、所長さんや、事務所の方々がいろいろな話をしてくださり、私の進路のこととかも話にしてくださって、ほんとうに勉強になった。

学校では模型制作の授業はなかったし、友達の卒業設計の模型制作を手伝ったことぐらいしか挙げられなかった自分だが、今回はカッターの切り方から教えてもらった。プレゼンテーション時の模型の担う役割、説得力の大きさに、模型もひとつの商品と考えられるな、と思った。この夏のオープンデスクは、たくさんのことを教えていただき、勉強になったと思う。

 

 

 

  カッターの切断が模型製作の主な作業のひとつである。はじめは30度カッターさえ用意するのにも手間取ってしまい、画材専門店の世界堂で買ってきてもらった。切断面を直角に切ること、まっすぐ直線に寸法どおりに切ること、など一番シンプルな作業だが、要求される技術は一番難しいものだと思った。

  

 はじめてスタイロも扱った。オープンデスクの先輩にスタイロの切断を教えてもらい、何度か練習するときれいな滑らかな切断面に切れるようになった。しかし、少し気を抜いたりすると切断面はゆがんでしまう。むずかしい作業のひとつだと思った。

 はじめに、プランの決定している箇所から意匠模型をつくった。宮殿や外壁や門などである。プランが決定しているところの模型を作るのは、言われたとおりにつくるので、今思えばスムーズに作業が進んだと思う。

 そして、ボリュームをみるために、スタイロで建物を製作した。スタイロを切って貼り付けたあと、ジェットを筆で塗って白くする。ジェットは何度も塗りなおして徐々にきれいな壁面にしていく。この作業も、気の長い耐力が必要で、焦って乾く前に塗りなおすと、ムラができて汚くなってしまう。ムラをつくってしまって、もう一度スタイロのカットからやり直さなければならなくなってしまい、難しいなぁと思った。

つぎに、最終打ち合わせ用のスタディ模型の制作に取り掛かった。藤間さんから説明を受ける。これからの模型製作の内容は以下のとおりである。

Phase1                          

モデル                         

屋根@1820を3つ                  

◇phase2                          

モデル

屋根を2つ

図面

α-5°、α-フラット、θ-1°、θ-2°

◇phase3

図面

@1820,@2730,@3640

(柱ピッチ、使い勝手の検証)

phase4

  モデル

内観取り出し模型

@2730,@1820

(柱ピッチ、見え方の検証)

はじめは、がむしゃらに言われたことをやっていたので、あまり自分のしていることに理解が追いついていないかんじだったが、藤間さんと武田さんに最終打ち合わせの内容を話してもらって自分のしていることがはっきりわかってきた。

お寺の方々はスパンが大きいほうがいいと言ってらっしゃるようで、事務所側はスパンが小さいほうを提案している。どちらの展開模型もつくって納得させようというようだ。

廊下の屋根と柱間隔の、展開模型の作成に取り掛かる。下はそのメモである。

柱 

オリジナル高さ

900DOWN

オリジナル

 

南北1°

 

南北2°

 

東西5°

東西

10°

東西0°

 

注)☆印が、事務所側が一番推薦しているパターン

○印がつくる展開模型

 

オープンデスクの人がひとりひとりやることを任され、自分の模型作りのスキルに模型作りの作業の流れのひとつが任されていることで緊張する。カッターの使い方もまだまだだぁ・・と感じる。

 つくったものがなんなのか確認して管理しないと、展開模型を何パターンもつくるのでどれがどれかわからなくなってくる。アタフタしていると、怒られてしまった。しっかりしないと・・。

そして気がつくと間違って列柱の柱の土台の長さを間違えてしまったり、数々の失敗をしてしまった。プレゼンの日も近まり緊張感の増す事務所で、いっぱいいっぱいになりながらも、がんばれたと思う。

毎日朝から模型をつくる。お寺の模型が徐々にかたちになってきた。おもしろい。木もつくる。

きれいなカーブを描いていた壁が、直線のほうが美しいとなってまっすぐにすることになった。

 そして、模型が完成した!すごくうれしい。緻密な作業だったので完成度が高いと思った。列柱の並びがきれいだと思った。

プレゼン前日の日、模型写真の撮影にとりかかる。模型を持ち運ぶための箱もつくる。

 夜、最終確認が入り、次の日プレゼンに行かれた。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プレゼンの次の日、所長さんの家にお邪魔してバーベキューをいただいた。おいしかった。

おつかれさまでした。そして、ごちそうさまでした!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おわりに

夜行バスで三ノ宮を出発。

1時間前まで学校でゼミをしていたのに、今は阪神高速だ。明日の朝には東京に着く。明日の朝から逗子の事務所で働くのだ。

 朝

6時ごろ東京駅に着く。電車で逗子に直行する。この前面接に行ったときは不安と緊張でいっぱいだった。今日はなんだか晴やかだ。新しいことに出発というかんじで、緊張はしているが冬の朝のようなピンとした張り詰めた気持ちだ。よーし。鎌倉駅のコインロッカーに荷物を置いて、バスで事務所へ。一度行っているので気持ちに余裕をもって事務所に到着できた。挨拶ははじめがいちばん肝心だ。今日からスタートだ。

 毎日朝

5時半か6時に起きる。夏だからだろうか。毎日早く起きれる自分にびっくりだ。(そういえば一度寝坊したが。)泊まっているホテルはすごく年期のはいったかんじだが24時間お風呂にはいれるところがいい。夜帰って味気ない2段ベッドに倒れるように寝る。帰っても自分の家でないのでストレスも感じるが疲れのほうが勝っている。すぐ眠る。朝起きると気持ちがスッキリしている。単純だ。朝ごはんを食べてホテルを発つ。自転車で海岸線を走る。気持ちがいい。ほんとにいいところだなーと思う。この道を走る車に乗っている人たちも犬の散歩をしている人もサーファーも、この海が、この海岸線が好きだという雰囲気がでている。涼しい朝の時間が一番気持ちいい。鎌倉を過ぎ、逗子に向かう。

 毎日思っていたのだが、事務所の方々は本当に建築が好きだ。お昼休みのときも最近の建築の話などしていらっしゃって、おもしろかった。自分は就職を前にしていてなにがしたいのかわからなくなっていた。就職だけでなく、人生とかそういうことに毎日焦っていた。大学院で免震の研究をしているが、突出した知識を深め研究をすすめる日々に、なにかに置いていかれている感触が毎日あった。

昼休みのときや休憩に私の就職のことなども話していただいて、設計事務所で働くことなどを働いている方の視点からアドバイスしていただいて、そうかそうかーと考えさせられた。面接のとき、構造を専攻している私が今から設計事務所というのはかなりきつい、設計をしたい人から何年も遅れをとっているし、

24時間365日設計できるくらいの気持ちがないとできないよ、と所長さんがおっしゃった。仕事終わりに事務所でお酒をいただく機会をいただいたが、そのとき、所長さんが私に河津さんなら大丈夫だよと言っていただいたことを私は胸に残そうと思っている。心強い言葉をいただいてうれしかった。オープンデスクに来ている人も多く、心強かったし、刺激も受けた。楽しく働くことができて本当によかった。設計事務所で働く機会をいただいて、悶々と悩むことから確実に一歩抜け出せたと思う。もうすぐ就職活動もはじまるが、これから関西で構造設計事務所でオープンデスクをしてみようと思う。貴重な経験を得ることができ、これから自分は、自分の言葉で、自分の足で、建築と向き合えるようになりたいと思った。

 所長さんも藤間さんも武田さんも、関西から突然来た私に本当にしてくれてありがとうございます。思い返しても変人なことを色々してしまいました。嫌な顔もされずに、仕事を手伝わせていただけたことに、感謝しています。近くに行く機会があればまたお邪魔したいし、これからも

HPで事務所の方々の近況を伺いたいと思っています。またメールかなにかでご連絡もとらせていただきたいと思ってます。この夏の一番の思い出をいただき、ありがとうございました。

河津 宏美

 

オープンデスクレポート・2